Lens Impression
東京光学のレンズは同じスペックの表記で年代的に近くてもレンズ構成が異なるものがありますので、注意が必要です。
この50mmf1.5はレオタックスF型カメラの最上位標準レンズで、前群がゾナー型、後群がガウス型の折衷構成として有名です。
1955年にレンズ銘がシムラー5cmf1.5からトプコール5cmf1.5に変更されたときに、後群の設計に変更が加えられました。後群3枚のレンズは曲率を含めて形状がすべて変更されているようですので、シムラー5cmf1.5とは描写にもそれなりの違いが出てきているのではないでしょうか。
いつか試してみたいと思います。
シムラー5cmf1.5 |
描写は開放から安定した非常にシャープなものでした。
開放では、背景のボケにはそれなりの収差による興味深い乱れがありますが、焦点部分の抜けが非常によく、透明感があるためか、とても立体感を感じさせる描写のように思えました。
>多少絞ると、背景のボケの癖も少なくなり、とても素直な画像になります。
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1930年代、レンズ設計においては世界をリードしていた欧州各国においても、高速レンズはキノ・プラズマート、ビオター、ゾナー、そしてクセノンなどがあるのみで、著名レンズ設計者は非対称型、ダブルガウス型それぞれの基本ライン上でいかに収差の征服を図るか試行錯誤を繰り返していた。
そうした中、レンズ設計においてはいまだ後進国であった日本において、戦前の1938年に設計された前群ゾナー型、後群ガウス型の独創的なシムラー5cmf1.5は、ゾナー型の非対称設計からくる画面の一定角度以上での歪曲収差、球面収差と、一方のダブルガウス型の宿命的収差である輪帯部のコマ収差の双方を、新種ガラスの開発前にうまくバランスを取って極小化することを試みたレンズとして画期的なレンズであり、設計者富田良次の革新性が衝撃を与えた。
この構成は、前群をゾナー型にすることにより、ダブルガウス型欠点である輪帯部のコマ収差を発生させる第3群の絞り直後の強い凹面を柔らかくすることができ、それによりダブルガウス型宿命のコマ収差を大きく軽減することができる。ただし、その凹面は「ルドルフの原理」にあるように球面収差、歪曲収差、軸上色収差などの打ち消しに大きく作用していたものであり、その球面収差などの悪化を第2群の3枚貼り合わせの接合面の調整によって、除去するというものである。その発想は大きな改善をもたらしたが、むろん完璧は困難で、結果的に輪帯部の球面収差は対称型よりやや悪化、コマ収差は大きく改善、像面がやや曲がり非点収差がわずかに悪化、歪曲、色収差は良好というようなバランスのとれた性格となった。
シムラー5cmf1.5の実際の発売は設計から大幅に遅れ、戦後1950年のレオタックスD-IV型への装着からといわれているが、その2−3年以前から一部供給されていたという説もある。
また、確証はないが、この設計が、英国ダルマイヤー社において、1942年のセプタック 5cmf1.5へと結びついた可能性は否定できない。さらに、1948年に富士フィルムの土居良一が特許を取得し、後に5cmf1.2の基礎となった、Solinon(ゾリノン) 5cmf1.5の構成もこれに近い。
そのシムラー5cmf1.5が1954年にレオタックスF型に装着されるときに後群の一部を見直して再設計された。このレンズが、トプコール5cmf1.5である。この設計変更は、その3年前に5cmf0.7レンズを再設計して後群を見直した設計者が丸山修二が行ったが、後に彼はこの時の後群の見直しは、収差が被写体の距離によって変化することと、遠景では絞られることが多く近景では開放が多いという撮影手法まで考慮したと語っている。(写真工業1956.2)
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